長尾文庫
長尾文庫とは
「長尾文庫」は、社史を中心に団体史、産業史、人物史、定款、営業報告書、広告資料(引札)等を加えた企業の歴史資料コレクションです。当時、株式会社大長水産代表取締役 長尾隆次氏(1929~2016)が1950年からおよそ30年間にわたり個人的に収集されていたものを1983年に龍谷大学が購入。これを長尾文庫と命名し、深草図書館で所蔵するに至ったものです。
この長尾文庫は、社史、団体史、産業史における日本最大の総合コレクションで、質・料ともに全国屈指のものであり、近代日本の経営史における資料的価値は高く評価されています。このコレクションは、現在も収集を継続しています。
長尾文庫について
~過去に紹介されました新聞記事や雑誌記事などを転載させていただきます~
日本一の社史コレクション
限定本を主に7000余点 収集家・長尾氏から購入[来春公開へ]
1983/04/05, 京都新聞 夕刊
日本一の社史コレクションといわれる「長尾コレクション」が、こんど竜谷大=京都市伏見区深草=に購入され、来春の公開をメドに、いま七千余点にのぼる資料の整理が進められている。浄土真宗本願寺派(西本願寺)の宗門大学としてスタートしただけに、文学部=京都市下京区=の仏典関係資料は、日本一の評価が高いが同コレクションを備えたことで、経営学部、経済学部にも大きな核が誕生したことになる。長尾コレクションの持つ意義などについて、竜谷大の小林袈裟治・経営学部長、大塚圭介・経済学部長に聞いた。
長尾コレクションは大阪で鮮魚仲卸会社を経営する長尾隆次さん(五三)=西宮市奥畑四ノ九=が、約三十年かかって収集したものである。総資料数は約七千五百点、その他、明治・大正・昭和初期などの企業活動の実施を伝えるなどの重要な資料も豊富。社史コレクションとしては東京大、一橋大、神戸大などが充実しているといわれているが、いずれも四千点前後。個人コレクションでありながら、長尾コレクションは資質ともに、全国一のものと評価されていた。
昨年暮れに、「コレクションの当初の目的は、経営者である自身の教育的資料になるから、と始めたが、これだけ蔵書数が増え、社会的にも世評が高くなってくると、個人の力では管理責任が果たせなくなってきた。社会責任からも、公的機関に持ってもらうほうが…」という長尾さんの意向を知り、竜谷大はいち早く購入を申し入れた。米国のミシガン州立大や、ダイエーの中内功社長らも希望していたらしいが、その中での競争にせり勝った形。経営、経済両学部では「今後の研究活動にとって、単に東京だけでなく、とくに関西地区の研究者に大きなプラスになるはず」と期待している。
コレクションは、すでに大学図書館で整理が始められたが、ほとんどが非売品として発行されたもので珍本、奇本も多く、整理に当たるスタッフも、改めて長尾さんの努力に目を見張っているという。約七千五百点のうち六千数百点が社史類。残る約一千点が業界資料やポスター、宣伝ビラなど、中には「日本銀行沿革集」(計六巻)をはじめ、限定五十部発行という「稿本三井物産百年史」(上下巻)や部内秘密の「味の素五十年史稿」、未定稿の「別府化学社史」などの、日本産業界の歴史を研究する上で、かかせない資料が数多い。
長尾さんは、これまで自費出版で、これら資料の「蔵書目録」三巻を出版。四巻目も発行する予定だが、竜谷大では全国共通の図書分類法に基づく整理方法をとることにしており、整理の進行によっては、分類のできたものから順次公開することも考えている。また、昭和六十五年が竜谷大の創立三百五十周年(前身の西本願寺学寮から数えて)に当たるためその記念事業の一環として「企業関係資料センター」(仮称)の創設も構想されており、長尾コレクションをその中核に据える予定。小林、大塚両学部長は「長尾さん自身、これからまだ集めたい資料として約百二十点をリスト・アップしており、これも集まり次第に、コレクションに加えてくれることになっている。また、竜谷大が日本一の社史コレクションを持ったことが呼び水となって、さらに全国の企業などから社史関係資料が集まって、一層の充実が期待されるとも思っている」と語っている。
限定本を主に7000余点 収集家・長尾氏から購入[来春公開へ]
1983/04/05, 京都新聞 夕刊
日本一の社史コレクションといわれる「長尾コレクション」が、こんど竜谷大=京都市伏見区深草=に購入され、来春の公開をメドに、いま七千余点にのぼる資料の整理が進められている。浄土真宗本願寺派(西本願寺)の宗門大学としてスタートしただけに、文学部=京都市下京区=の仏典関係資料は、日本一の評価が高いが同コレクションを備えたことで、経営学部、経済学部にも大きな核が誕生したことになる。長尾コレクションの持つ意義などについて、竜谷大の小林袈裟治・経営学部長、大塚圭介・経済学部長に聞いた。
長尾コレクションは大阪で鮮魚仲卸会社を経営する長尾隆次さん(五三)=西宮市奥畑四ノ九=が、約三十年かかって収集したものである。総資料数は約七千五百点、その他、明治・大正・昭和初期などの企業活動の実施を伝えるなどの重要な資料も豊富。社史コレクションとしては東京大、一橋大、神戸大などが充実しているといわれているが、いずれも四千点前後。個人コレクションでありながら、長尾コレクションは資質ともに、全国一のものと評価されていた。
昨年暮れに、「コレクションの当初の目的は、経営者である自身の教育的資料になるから、と始めたが、これだけ蔵書数が増え、社会的にも世評が高くなってくると、個人の力では管理責任が果たせなくなってきた。社会責任からも、公的機関に持ってもらうほうが…」という長尾さんの意向を知り、竜谷大はいち早く購入を申し入れた。米国のミシガン州立大や、ダイエーの中内功社長らも希望していたらしいが、その中での競争にせり勝った形。経営、経済両学部では「今後の研究活動にとって、単に東京だけでなく、とくに関西地区の研究者に大きなプラスになるはず」と期待している。
コレクションは、すでに大学図書館で整理が始められたが、ほとんどが非売品として発行されたもので珍本、奇本も多く、整理に当たるスタッフも、改めて長尾さんの努力に目を見張っているという。約七千五百点のうち六千数百点が社史類。残る約一千点が業界資料やポスター、宣伝ビラなど、中には「日本銀行沿革集」(計六巻)をはじめ、限定五十部発行という「稿本三井物産百年史」(上下巻)や部内秘密の「味の素五十年史稿」、未定稿の「別府化学社史」などの、日本産業界の歴史を研究する上で、かかせない資料が数多い。
長尾さんは、これまで自費出版で、これら資料の「蔵書目録」三巻を出版。四巻目も発行する予定だが、竜谷大では全国共通の図書分類法に基づく整理方法をとることにしており、整理の進行によっては、分類のできたものから順次公開することも考えている。また、昭和六十五年が竜谷大の創立三百五十周年(前身の西本願寺学寮から数えて)に当たるためその記念事業の一環として「企業関係資料センター」(仮称)の創設も構想されており、長尾コレクションをその中核に据える予定。小林、大塚両学部長は「長尾さん自身、これからまだ集めたい資料として約百二十点をリスト・アップしており、これも集まり次第に、コレクションに加えてくれることになっている。また、竜谷大が日本一の社史コレクションを持ったことが呼び水となって、さらに全国の企業などから社史関係資料が集まって、一層の充実が期待されるとも思っている」と語っている。
長尾コレクション /経営学部長 小林袈裟冶
1983/05/20, 広報龍谷 第10号
このたび本学深草図書館で購入した、いわゆる「長尾コレクション」については、すでに新聞紙上でも報じられているので、その概略は御存知の方も多いであろう。しかし各社の報道内容にはいささかのくい違いがある。そこでこの紙面をかり、本コレクションの購入に際し、折衝の任に当った者として、ことの経緯を明らかにするとともに、経営史研究に携わる一学徒として、その資料的価値ならびに今後の利用方法について若干述べてみたい。
■購入の経緯と長尾コレクションの由来
それは昨年十一月下旬のことであった。本学経済学部に非常勤講師としておいでいただいている三和銀行調査部の竹内一男氏より一通のメモが私のもとに届けられた。そして、それには長尾隆次氏が社史のコレクションを手放す意向であること、もし龍大で購入の意志があるなら紹介してもよいとの旨が記してあった。これはビッグニュースであった。というのは私自身それまでに、大阪のある社長さんが膨大な社史を収集しているということをNHKのテレビや日経新聞等で知っていたし、日本経営史の研究者の間で話題となっていたのを耳にしていたからである。
私はこれを龍大で是非購入してもらいたいと思った。古い歴史をもつ大宮図書館には、仏教・真宗関係の資料では世界に誇るコレクションがあるが、新設の深草図書館にはそうしたものは無きに等しい。だがもしこのコレクションが手に入るならば、それなりの目玉が深草にもできるのではないか-と私は考えた。
そこで急きょ、各学部長・図書館長に集まってもらい、購入の可能性について検討していただいた。その結果、これは経営学部のみならず経済学部や法学部でも利用し得る資料であるとの結論に達した。一方、私は同じ学会に属し日本経営史を専攻する何人かの知人に電話を入れ、このコレクションの資料的価値についての判断を求めた。外国経営史を専攻の私にとって適格な判断を下す自信は、正直いってなかったからである。
回答に応じてくれた人の中には、この資料の散逸あるいは海外への流出を憂える者もあれば、龍大の一大壮挙なりとおだて上げる者もいたが、資料的価値に疑念をはさむ者は皆無で、結論は全て肯定的であった。
それから二週間のほどの間に、二度にわたる現物の調査、それにもとづく全学図書委員会の開催と、矢つぎ早に手が打たれた。そして新年に入り、予算措置も講ぜられる目途がたったところで正式の契約が結ばれ、三月九日、本コレクションは龍大に運ばれて深草図書館四階の書架に収められたのである。
私がこのコレクションの実物をはじめて見たのは昨年十一月二十二日、経済学部長の大塚教授、同学部の大月教授、深草図書館の渋田氏に同行し、現物の調査に赴いたときである。大阪駅にほど近いビルの一室を書庫として、このコレクションは特別製の書架に収められていたが、その整然たる収納ぶりの中に、所有者の蔵書に対する並々ならぬ愛情が感ぜられた。当主の長尾隆次氏は大長水産なる鮮魚仲卸会社の社長であるが、世のマニアと呼ばれる人びとの中にしばしば見られる変人奇人の類では全くなく、極めて温厚な実業家タイプの人であり、交渉は当初からスムーズに進んだ。
由来、社史は出版界の私生児をいわれたぐらいで、原則として非売品、通常の流通経路にのって店頭に並ぶということがまずなく、それゆえに社史の収集には独自のノウハウが必要である。長尾氏は約三十年昔に社史の収集を思いたち、いらい手に入るものはすべてを集めて今日に至ったのだという。
今回龍大に入ったコレクションは、ビラ、ポスター、帳簿等を含め、総点数約七、五〇〇点、うち社史・業界史だけで六、〇〇〇点を越えるが、このすべてが氏の頭の中にインプットされており、たとえば所用で上京のおり、神田の古本屋などで、社史の類が目に入れば、その瞬間にそれが自分の蔵書の中にあったか否かが判るのだという。こうした既存の社史とともに氏の頭の中には未収社史の目録もインプットされているのだそうで、ともかく長尾氏は抜群の記憶力を頼りに一点一点収集につとめられたらしい。
われわれは氏の長きにわたる社史収集への努力に敬意を表し、龍大に引き取ったのちも氏の名称を何らかの形で残すことを申し出て、氏もその旨を諒とされた(本学の慣例に従いこのコレクションは「長尾文庫」と呼ばれることになろう)。いずれにせよ長尾文庫は、その量と質において社史関係では他の追随を許さないものであり、新聞各紙がこぞって「日本一のコレクション」と見出しに掲げたのも、あながち誇張ではない。
■資料的価値と今後の利用法
社史は企業経営史研究のための資料としては最も基本的な第二次資料である。しかしながら社史は、通常、企業内部の人びとによって編纂されるため、当初の原稿がどれほどすばらしいものであっても、重役たちの間で回覧されてゆく過程でズタズタにされ、ホンネが消されてタテマエだけが残るという宿命にあり、そこに資料としての制約がある。そこで、資料としては刊行される以前の未定稿あるいは稿本の類がより望ましいのだが、本コレクションにはこうしたものも少なからず含まれている。
また、印刷はされたものの何らかの事情で日の目を見なかったもの、あるいは内部のごく一部の者にだけに配布されたものなども含まれており、これが若干の商業通信文とともに本コレクションの資料的価値を著しく高めている。いずれにせよ社史には、それに固有の資料的制約はあるが、にもかかわらず社史は、利用の仕方如何により企業の過去に関する情報の宝庫となることは疑いない。それに加え最近では、たとえばこれまでに刊行された社史を素材として、業種別に、その傾向や特質を明らかにしようとする日本経営史学会の企画などにみられるように、社史そのものの価値が見直される気運にあることも付言しておこう。
資料は個人的に独占すべきものではなく、学界の共有財産として広く利用されるべきものであり、事実、長尾氏が自己のコレクションを手放されるに至った主たる動機もここにあると聞いている。そこで第一に本コレクションは整理が済み次第、文献目録を作成し、研究者の利用に供すべきであろう。
第二に、このコレクションを個別企業に関する事例研究(ケーススタディー)の教材に用いてもらいたいと思う。なるほど企業を抽象的な理論で明らかにすることも可能であろう。しかしこうした教材によって現実の企業の歩みを学ぶことにより、その理解度はいっそう高まるに相違いない。
第三に、本コレクションには、幕末から明治期にかけて企業が作成したポスターの類が数多く含まれている。錦絵風に画かれた広告は見ても楽しく、当時の風格を知るうえでも参考になる。大宮図書館には、たとえばシルクロード関係資料をはじめ貴重な資料が多数あるが、そうしたものと併せ本コレクション中のめぼしいものを展示することにより、研究教育機関としての龍大の姿を世の人びとに見てもらうことも考えてはどうか。
以上、長尾コレクションの概略について述べたが、このコレクションの購入が機縁となって、将来、龍谷大学深草図書館が企業関係の資料センター的な役割を果たすようになればと願っている。そしてそれは、おそらくは近く迎える大学創立三五十周年記念事業の重要な一環として位置づけられるべきものであろう。
最後に再び本コレクション購入に際し折衝の任に当った者として、仲介の労をとられた竹内一男先生をはじめ、協力を惜しまれなかった関係者各位に対し、心からの感謝の意を表したい。
1983/05/20, 広報龍谷 第10号
このたび本学深草図書館で購入した、いわゆる「長尾コレクション」については、すでに新聞紙上でも報じられているので、その概略は御存知の方も多いであろう。しかし各社の報道内容にはいささかのくい違いがある。そこでこの紙面をかり、本コレクションの購入に際し、折衝の任に当った者として、ことの経緯を明らかにするとともに、経営史研究に携わる一学徒として、その資料的価値ならびに今後の利用方法について若干述べてみたい。
■購入の経緯と長尾コレクションの由来
それは昨年十一月下旬のことであった。本学経済学部に非常勤講師としておいでいただいている三和銀行調査部の竹内一男氏より一通のメモが私のもとに届けられた。そして、それには長尾隆次氏が社史のコレクションを手放す意向であること、もし龍大で購入の意志があるなら紹介してもよいとの旨が記してあった。これはビッグニュースであった。というのは私自身それまでに、大阪のある社長さんが膨大な社史を収集しているということをNHKのテレビや日経新聞等で知っていたし、日本経営史の研究者の間で話題となっていたのを耳にしていたからである。
私はこれを龍大で是非購入してもらいたいと思った。古い歴史をもつ大宮図書館には、仏教・真宗関係の資料では世界に誇るコレクションがあるが、新設の深草図書館にはそうしたものは無きに等しい。だがもしこのコレクションが手に入るならば、それなりの目玉が深草にもできるのではないか-と私は考えた。
そこで急きょ、各学部長・図書館長に集まってもらい、購入の可能性について検討していただいた。その結果、これは経営学部のみならず経済学部や法学部でも利用し得る資料であるとの結論に達した。一方、私は同じ学会に属し日本経営史を専攻する何人かの知人に電話を入れ、このコレクションの資料的価値についての判断を求めた。外国経営史を専攻の私にとって適格な判断を下す自信は、正直いってなかったからである。
回答に応じてくれた人の中には、この資料の散逸あるいは海外への流出を憂える者もあれば、龍大の一大壮挙なりとおだて上げる者もいたが、資料的価値に疑念をはさむ者は皆無で、結論は全て肯定的であった。
それから二週間のほどの間に、二度にわたる現物の調査、それにもとづく全学図書委員会の開催と、矢つぎ早に手が打たれた。そして新年に入り、予算措置も講ぜられる目途がたったところで正式の契約が結ばれ、三月九日、本コレクションは龍大に運ばれて深草図書館四階の書架に収められたのである。
私がこのコレクションの実物をはじめて見たのは昨年十一月二十二日、経済学部長の大塚教授、同学部の大月教授、深草図書館の渋田氏に同行し、現物の調査に赴いたときである。大阪駅にほど近いビルの一室を書庫として、このコレクションは特別製の書架に収められていたが、その整然たる収納ぶりの中に、所有者の蔵書に対する並々ならぬ愛情が感ぜられた。当主の長尾隆次氏は大長水産なる鮮魚仲卸会社の社長であるが、世のマニアと呼ばれる人びとの中にしばしば見られる変人奇人の類では全くなく、極めて温厚な実業家タイプの人であり、交渉は当初からスムーズに進んだ。
由来、社史は出版界の私生児をいわれたぐらいで、原則として非売品、通常の流通経路にのって店頭に並ぶということがまずなく、それゆえに社史の収集には独自のノウハウが必要である。長尾氏は約三十年昔に社史の収集を思いたち、いらい手に入るものはすべてを集めて今日に至ったのだという。
今回龍大に入ったコレクションは、ビラ、ポスター、帳簿等を含め、総点数約七、五〇〇点、うち社史・業界史だけで六、〇〇〇点を越えるが、このすべてが氏の頭の中にインプットされており、たとえば所用で上京のおり、神田の古本屋などで、社史の類が目に入れば、その瞬間にそれが自分の蔵書の中にあったか否かが判るのだという。こうした既存の社史とともに氏の頭の中には未収社史の目録もインプットされているのだそうで、ともかく長尾氏は抜群の記憶力を頼りに一点一点収集につとめられたらしい。
われわれは氏の長きにわたる社史収集への努力に敬意を表し、龍大に引き取ったのちも氏の名称を何らかの形で残すことを申し出て、氏もその旨を諒とされた(本学の慣例に従いこのコレクションは「長尾文庫」と呼ばれることになろう)。いずれにせよ長尾文庫は、その量と質において社史関係では他の追随を許さないものであり、新聞各紙がこぞって「日本一のコレクション」と見出しに掲げたのも、あながち誇張ではない。
■資料的価値と今後の利用法
社史は企業経営史研究のための資料としては最も基本的な第二次資料である。しかしながら社史は、通常、企業内部の人びとによって編纂されるため、当初の原稿がどれほどすばらしいものであっても、重役たちの間で回覧されてゆく過程でズタズタにされ、ホンネが消されてタテマエだけが残るという宿命にあり、そこに資料としての制約がある。そこで、資料としては刊行される以前の未定稿あるいは稿本の類がより望ましいのだが、本コレクションにはこうしたものも少なからず含まれている。
また、印刷はされたものの何らかの事情で日の目を見なかったもの、あるいは内部のごく一部の者にだけに配布されたものなども含まれており、これが若干の商業通信文とともに本コレクションの資料的価値を著しく高めている。いずれにせよ社史には、それに固有の資料的制約はあるが、にもかかわらず社史は、利用の仕方如何により企業の過去に関する情報の宝庫となることは疑いない。それに加え最近では、たとえばこれまでに刊行された社史を素材として、業種別に、その傾向や特質を明らかにしようとする日本経営史学会の企画などにみられるように、社史そのものの価値が見直される気運にあることも付言しておこう。
資料は個人的に独占すべきものではなく、学界の共有財産として広く利用されるべきものであり、事実、長尾氏が自己のコレクションを手放されるに至った主たる動機もここにあると聞いている。そこで第一に本コレクションは整理が済み次第、文献目録を作成し、研究者の利用に供すべきであろう。
第二に、このコレクションを個別企業に関する事例研究(ケーススタディー)の教材に用いてもらいたいと思う。なるほど企業を抽象的な理論で明らかにすることも可能であろう。しかしこうした教材によって現実の企業の歩みを学ぶことにより、その理解度はいっそう高まるに相違いない。
第三に、本コレクションには、幕末から明治期にかけて企業が作成したポスターの類が数多く含まれている。錦絵風に画かれた広告は見ても楽しく、当時の風格を知るうえでも参考になる。大宮図書館には、たとえばシルクロード関係資料をはじめ貴重な資料が多数あるが、そうしたものと併せ本コレクション中のめぼしいものを展示することにより、研究教育機関としての龍大の姿を世の人びとに見てもらうことも考えてはどうか。
以上、長尾コレクションの概略について述べたが、このコレクションの購入が機縁となって、将来、龍谷大学深草図書館が企業関係の資料センター的な役割を果たすようになればと願っている。そしてそれは、おそらくは近く迎える大学創立三五十周年記念事業の重要な一環として位置づけられるべきものであろう。
最後に再び本コレクション購入に際し折衝の任に当った者として、仲介の労をとられた竹内一男先生をはじめ、協力を惜しまれなかった関係者各位に対し、心からの感謝の意を表したい。
『長尾文庫目録』出版によせて /株式会社 大長水産 代表取締役 長尾隆次
1986/03, 長尾文庫目録
このたび、龍谷大学図書館におかれ、元長尾隆次所有であった社史及び企業資料の目録が刊行されましたことは、私にとり誠に意義深く、心より感謝いたしますとともに、ご同慶にたえない次第です。
本資料は、私個人が昭和25年から58年迄、30有余年の歳月をかけて収集したもので、社史については、これまで我が国で刊行されたうちの大半を集めえたと、秘かに自負いたしております。勿論、これらの資料は個人の所蔵にかかるものでありますが、マスコミで報道される度に、研究者の利用要求が高まり、その対応に追われることとなりました。
こうした研究者の利用要求をみたし、併せてこれらの膨大な資料の有効活用を計ることが、収集者としての社会的責任と考えるに至り、研究機関への譲渡を決意致しました。その譲渡先について、関西で生まれ関西で育った私としては、どうしても関西の地に永久保存し、広く研究者に利用を許される大学に決定したいと考えておりました。幸い、国内外の公的機関から入手希望が多数よせられましたが、その中で恩師でもある龍谷大学経営学部長の小林袈裟治教授はじめ同大学関係各位のこのコレクションに対する価値観(私の収集努力に対する敬意とご理解をいただいたこと)、社史・企業資料等が経済・経営の諸分野の研究に不可欠であり、極めて重要であるという強いご認識に感服いたし譲渡するに至りました。
昭和54年、私は日本経済新聞の文化欄に「社史は歴史の証人」と題し、一文を掲載されたことがあります。社史収集の動機は、もともと大発展を成し遂げた企業のプロセスに関心を持っていましたが、 社史は歴史の証人であり、これらの足跡を記録したものであるということからでありました。いま、社史収集の30年間をふりかえってみますと、収集したその一冊一冊に深い思い出があり、その上、私の教育書として共に歩んでくれました。なかには、30数個所から注文が殺到し抽選の上、入手したものも含まれています。また、一冊を手に入れたいため新幹線で東京に行き獲得したこともあり、収集範囲は文字通り、北は北海道、南は沖縄まで全国各地に及んでいます。
特に「日本銀行沿革史」第三集(全20巻)、「稿本・三井物産株式会社100年史」(上・下)、「(三菱商事)立業貿易録」、「加賀屋敷経歴史」、「三井鉱山五十年史稿抜粋」(第1巻‐第20巻)、「東洋拓殖株式会社創立顛末書」、「工部省沿革報告」、「(未定稿)別府化学社史」(現製鉄化学)、「鈴木商店支配人室重要書類綴」(84資料)、「大阪府漁業史」(未完成 明治20年‐明治23年)等は、入手に大変苦労した資料として取り上げることができます。
一方、収集の傍ら、荒川化学工業株式会社常務取締役 大江神一氏の依頼により大阪商工会議所において講演いたしましたことは誠に有意義でありました。また同様に、小林教授はじめ大阪大学 宮本又次名誉教授、大阪大学 作道洋太郎教授、神戸大学 桂 芳男教授、神戸大学経済経営研究所の方々にそれぞれご教示頂いたこと、NHK経済記者の大塚 融氏にお世話になったことも忘れることはできません。また、30数社から社史の寄贈を受けましたこと、改めて篤くお礼申し上げます。
『長尾文庫目録』序 /龍谷大学図書館長 大月 誠
1986/03, 長尾文庫目録
本書は、昭和58年に購入した社史・団体史・産業史コレクション 長尾文庫の目録である。長尾文庫は、株式会社大長水産代表取締役 長尾隆次氏(現在信州大学経済学部講師を兼ねる)が30余年の歳月をかけて収集されたもので、社史を中心に団体史・産業史・人物史・定款・営業報告書・広告資料等を加えた厖大なコレクションである。特に社史は日本で刊行されたものの大半が収集されており、数十点に及ぶ稿本・未定稿を含め、全国でも有数の規模を誇るものといえる。
このコレクションは、個人コレクションでありながら、マスコミにも取上げられ、質・量ともに全国有数のものと評価が与えられている。研究者からも強く公開の希望が寄せられたため、長尾氏は、社会的責任からも公的機関への譲渡を決意された。国内外の大学から入手希望が寄せられたが、長尾氏の関西の大学へ、というご希望もあり、本学への譲渡が決定した次第である。
昨今、昭和30年代の社史ブームの跡をうけて、社史出版が増加傾向にある。社史は言うまでもなく、特定企業の経営史であり、特定企業や経営史の研究には欠くことのできない基本的資料であるが、社史ブーム以降の社史資料群の形成によって、産業史や日本経済史の重要な資料としても位置づけられつつある。
本学は、昭和64年に創立350周年を迎える。その歴史の大半が、僧侶の養成機関や、文学部のみの単科大学の機関であるが、昭和35年に深草学舎を開校し、順次、経済学部・経営学部・法学部を設置し、人文・社会科系の総合大学に成長してきた。社会科学系学部の教育や研究を支える図書・ 資料の収集について、深草図書館および社会科学研究所を中心に努力しており、社史も重点収集図書の一つとして約2,000冊を所蔵するに至っている。今回の周辺資料を含めた9,565冊の長尾文庫を合わせて、一大コレクションを所蔵することとなった。今後は社史、団体史、基幹労働組合史、個人伝記を中心に継続して収集をはかり、長尾文庫の一層の充実をはかる所存である。
今回の目録は、長尾文庫(購入分)に限定した。本来であれば、長尾氏収集による引札等の商業資料についても収録すべきであったが、特殊な資料でもあり、今回の収録から除外した。近い将来、商業資料や既蔵分および以後の収集分を対象とした追加目録の刊行を予定している。このため、本文庫整理にあたり、TRC情報サービスに委託し、J/MARCフォーマットによる機械可読目録(MARC)処理方式を採用し、データベース化をはかった。長尾文庫所蔵図書は閲覧カードを作成しないため、当面、資料検索は本目録によることとして、今後はパソコンなどによる機械検索をも開発・実施したいと考えている。 本文庫の購入および本目録編集にあたり、多数の方々のご援助をいただいたことに対し、心から謝意を表したい。また、本文庫の整理にあたり、物心両面にわたり協力いただいた深草図書館員一同の労を多としたい。
最後に、本文庫が積極的に活用され、企業研究、特に経営史、企業史研究が進展することを期待する。
1986/03, 長尾文庫目録
本書は、昭和58年に購入した社史・団体史・産業史コレクション 長尾文庫の目録である。長尾文庫は、株式会社大長水産代表取締役 長尾隆次氏(現在信州大学経済学部講師を兼ねる)が30余年の歳月をかけて収集されたもので、社史を中心に団体史・産業史・人物史・定款・営業報告書・広告資料等を加えた厖大なコレクションである。特に社史は日本で刊行されたものの大半が収集されており、数十点に及ぶ稿本・未定稿を含め、全国でも有数の規模を誇るものといえる。
このコレクションは、個人コレクションでありながら、マスコミにも取上げられ、質・量ともに全国有数のものと評価が与えられている。研究者からも強く公開の希望が寄せられたため、長尾氏は、社会的責任からも公的機関への譲渡を決意された。国内外の大学から入手希望が寄せられたが、長尾氏の関西の大学へ、というご希望もあり、本学への譲渡が決定した次第である。
昨今、昭和30年代の社史ブームの跡をうけて、社史出版が増加傾向にある。社史は言うまでもなく、特定企業の経営史であり、特定企業や経営史の研究には欠くことのできない基本的資料であるが、社史ブーム以降の社史資料群の形成によって、産業史や日本経済史の重要な資料としても位置づけられつつある。
本学は、昭和64年に創立350周年を迎える。その歴史の大半が、僧侶の養成機関や、文学部のみの単科大学の機関であるが、昭和35年に深草学舎を開校し、順次、経済学部・経営学部・法学部を設置し、人文・社会科系の総合大学に成長してきた。社会科学系学部の教育や研究を支える図書・ 資料の収集について、深草図書館および社会科学研究所を中心に努力しており、社史も重点収集図書の一つとして約2,000冊を所蔵するに至っている。今回の周辺資料を含めた9,565冊の長尾文庫を合わせて、一大コレクションを所蔵することとなった。今後は社史、団体史、基幹労働組合史、個人伝記を中心に継続して収集をはかり、長尾文庫の一層の充実をはかる所存である。
今回の目録は、長尾文庫(購入分)に限定した。本来であれば、長尾氏収集による引札等の商業資料についても収録すべきであったが、特殊な資料でもあり、今回の収録から除外した。近い将来、商業資料や既蔵分および以後の収集分を対象とした追加目録の刊行を予定している。このため、本文庫整理にあたり、TRC情報サービスに委託し、J/MARCフォーマットによる機械可読目録(MARC)処理方式を採用し、データベース化をはかった。長尾文庫所蔵図書は閲覧カードを作成しないため、当面、資料検索は本目録によることとして、今後はパソコンなどによる機械検索をも開発・実施したいと考えている。 本文庫の購入および本目録編集にあたり、多数の方々のご援助をいただいたことに対し、心から謝意を表したい。また、本文庫の整理にあたり、物心両面にわたり協力いただいた深草図書館員一同の労を多としたい。
最後に、本文庫が積極的に活用され、企業研究、特に経営史、企業史研究が進展することを期待する。
長尾文庫(社史・団体史・産業史)目録完成 /深草図書館 成山雅康
1986/05/30, 広報龍谷 第16号
●マスコミも注目●
昭和五十八年三月に、深草図書館で購入しました社史・団体史・産業史資料コレクション=長尾文庫の整理が完了、冊子目録を刊行しました。現在、公開のための作業を精力的に行っています。皆さんがこの記事をお読みになる頃には、利用可能となっていると思います。簡単に長尾文庫について紹介しましょう。
長尾文庫は株式会社大長水産代表取締役・長尾隆次氏(信州大学経済学部講師を兼ねる)が三十余年の歳月をかけて収集されたものです。この文庫には、昭和五十七年頃までに日本で刊行された社史の90%が収められているとともに、団体史、産業史、引札(広告資料)など、約一万冊の資料が収集されています。研究者の間では“長尾詣で”という言葉が生まれる程にその質的高さが認められ、その公開が強く求められていました。また、この文庫が研究者ではなく、在野の個人の収集に関わるものであることがマスコミの注目するところとなり、「日本経済新聞」、NHKテレビなどでも報道されており、極めて著名なコレクションと言えます。
●日本一の社史コレクションを購入●
これは「日本経済新聞」(昭和五十八年三月十八日付夕刊)の記事ですが、社史に関しては掛け値なしに日本一のコレクションです。最近では、社史は一年間に約百冊程が刊行されるといわれていますが、図書館では今後、長尾文庫のより一層の充実を計るため、社史(新刊は勿論のこと、未収集に至るまで)を中心に団体史・基幹労働組合史・人物史の収集の継続を決定しています。
●長尾文庫の特徴●
一般に社史は企業の記念出版物として刊行されるため、通常の出版ルートにはのらず、その入手には困難が伴います。また、社史は通常、企業の中で編集されるため、当初の原稿から企業にとって不都合なことはカットされがちです。このため原稿や稿本から隠された事実を明らかにすることは、企業史研究の進展にとって重要ですが、その入手は不可能に近いといわれています。 幸いなことに本文庫には「日本勧業銀行史」「味の素五十年史稿」「清水建設株式会社社史」などを初め数十点が含まれています。また、正規に印刷されたにも拘らず、諸種の事情で刊行されなかった社史も多数ありますが、「三井物産株式会社百年史」「別府化学社史」等はこの一例です。「日本銀行沿革史」(第三集)「立業貿易録」等、部内資料として社外秘とされている資料も数多く含まれています。
この他、総合商社の源流と称される鈴木商店支配人室の資料綴、「大阪府漁業誌」「釜山港埋築史」などの未発表資料も多数含まれています。また、事業史、営業案内、記念写真帖、営業報告書、定款等の企業史研究傍証資料が多いのも、この文庫の優れた特徴といえるでしょう。
また、この長尾文庫の資料的価値を一層高めるものとして、江戸末期から明治初期にかけての引札等の広告資料が含まれています。約五百点が収集されていますが、特殊な資料でもありますので、今回の目録には収録いたしませんでした。
今回の目録は、長尾隆次氏より譲り受けた資料に限定していますので、図書館や社会科学研究所が従来から収集している資料や以後の収集分については、先の引札類と合わせて、改めて追加目録を出版したいと考えています。
皆さんのご利用をお待ちしています。
1986/05/30, 広報龍谷 第16号
●マスコミも注目●
昭和五十八年三月に、深草図書館で購入しました社史・団体史・産業史資料コレクション=長尾文庫の整理が完了、冊子目録を刊行しました。現在、公開のための作業を精力的に行っています。皆さんがこの記事をお読みになる頃には、利用可能となっていると思います。簡単に長尾文庫について紹介しましょう。
長尾文庫は株式会社大長水産代表取締役・長尾隆次氏(信州大学経済学部講師を兼ねる)が三十余年の歳月をかけて収集されたものです。この文庫には、昭和五十七年頃までに日本で刊行された社史の90%が収められているとともに、団体史、産業史、引札(広告資料)など、約一万冊の資料が収集されています。研究者の間では“長尾詣で”という言葉が生まれる程にその質的高さが認められ、その公開が強く求められていました。また、この文庫が研究者ではなく、在野の個人の収集に関わるものであることがマスコミの注目するところとなり、「日本経済新聞」、NHKテレビなどでも報道されており、極めて著名なコレクションと言えます。
●日本一の社史コレクションを購入●
これは「日本経済新聞」(昭和五十八年三月十八日付夕刊)の記事ですが、社史に関しては掛け値なしに日本一のコレクションです。最近では、社史は一年間に約百冊程が刊行されるといわれていますが、図書館では今後、長尾文庫のより一層の充実を計るため、社史(新刊は勿論のこと、未収集に至るまで)を中心に団体史・基幹労働組合史・人物史の収集の継続を決定しています。
●長尾文庫の特徴●
一般に社史は企業の記念出版物として刊行されるため、通常の出版ルートにはのらず、その入手には困難が伴います。また、社史は通常、企業の中で編集されるため、当初の原稿から企業にとって不都合なことはカットされがちです。このため原稿や稿本から隠された事実を明らかにすることは、企業史研究の進展にとって重要ですが、その入手は不可能に近いといわれています。 幸いなことに本文庫には「日本勧業銀行史」「味の素五十年史稿」「清水建設株式会社社史」などを初め数十点が含まれています。また、正規に印刷されたにも拘らず、諸種の事情で刊行されなかった社史も多数ありますが、「三井物産株式会社百年史」「別府化学社史」等はこの一例です。「日本銀行沿革史」(第三集)「立業貿易録」等、部内資料として社外秘とされている資料も数多く含まれています。
この他、総合商社の源流と称される鈴木商店支配人室の資料綴、「大阪府漁業誌」「釜山港埋築史」などの未発表資料も多数含まれています。また、事業史、営業案内、記念写真帖、営業報告書、定款等の企業史研究傍証資料が多いのも、この文庫の優れた特徴といえるでしょう。
また、この長尾文庫の資料的価値を一層高めるものとして、江戸末期から明治初期にかけての引札等の広告資料が含まれています。約五百点が収集されていますが、特殊な資料でもありますので、今回の目録には収録いたしませんでした。
今回の目録は、長尾隆次氏より譲り受けた資料に限定していますので、図書館や社会科学研究所が従来から収集している資料や以後の収集分については、先の引札類と合わせて、改めて追加目録を出版したいと考えています。
皆さんのご利用をお待ちしています。
『長尾文庫目録 増補版』序 /龍谷大学図書館長 岸田 理
1990/03, 長尾文庫目録 増補版
わが国において企業経営に関する歴史研究が本格的に始められたのは、第2次大戦後である。その研究に果たした社史・団体史・産業史資料の役割は非常に大きい。なかでも社史に関する限り、わが龍谷大学が所蔵する長尾文庫は全国でも有数の規模を誇る一大コレクションであり、その蔵書冊数は現在のところ約12,000点の多きを数えている。この文庫の故事来歴については既に述べられているので(龍谷大学図書館所蔵『長尾文庫目録-社史・団体史・産業史資料-』、昭和61年3月刊、初版序文)、あえてここでは触れないでおこう。
本書は前記目録の増補改訂版である。この目録が目指している点は次の通りである。まず第一の点は、前目録が刊行されていらい今日に至るまで、本学の図書館員が長男文庫充実のために社史などの資料について積極的に蒐集した部分、および、 本学の社会科学研究所から移管した部分合わせて2,500冊が今回の目録に付け加えられている点である。さらに、第二の点は、前回の目録に含まれていた一部不備なデータが改正されている点である。したがって、今回の目録が質的にも量的にも前回のそれ(蔵書冊数9,565冊)を大きく凌駕している、といささか自負している次第である。
本目録が今後とも多くの人びとによって大いに利用され、企業史の研究は勿論のこと、関係方面の研究にいっそう寄与することになれば、誠に幸いである。 なお、最後に本目録の作成に当たって多大の労苦をいとわず、ひたすら改善に努めてきたわが図書館員一同に対して深く感謝の意を表したい。
1990/03, 長尾文庫目録 増補版
わが国において企業経営に関する歴史研究が本格的に始められたのは、第2次大戦後である。その研究に果たした社史・団体史・産業史資料の役割は非常に大きい。なかでも社史に関する限り、わが龍谷大学が所蔵する長尾文庫は全国でも有数の規模を誇る一大コレクションであり、その蔵書冊数は現在のところ約12,000点の多きを数えている。この文庫の故事来歴については既に述べられているので(龍谷大学図書館所蔵『長尾文庫目録-社史・団体史・産業史資料-』、昭和61年3月刊、初版序文)、あえてここでは触れないでおこう。
本書は前記目録の増補改訂版である。この目録が目指している点は次の通りである。まず第一の点は、前目録が刊行されていらい今日に至るまで、本学の図書館員が長男文庫充実のために社史などの資料について積極的に蒐集した部分、および、 本学の社会科学研究所から移管した部分合わせて2,500冊が今回の目録に付け加えられている点である。さらに、第二の点は、前回の目録に含まれていた一部不備なデータが改正されている点である。したがって、今回の目録が質的にも量的にも前回のそれ(蔵書冊数9,565冊)を大きく凌駕している、といささか自負している次第である。
本目録が今後とも多くの人びとによって大いに利用され、企業史の研究は勿論のこと、関係方面の研究にいっそう寄与することになれば、誠に幸いである。 なお、最後に本目録の作成に当たって多大の労苦をいとわず、ひたすら改善に努めてきたわが図書館員一同に対して深く感謝の意を表したい。
社史・団体史のご寄贈のお願い
龍谷大学深草図書館では以前より社史・団体史を重点的に収集しておりました。1983年、大阪の実業家、長尾隆次氏より約8,000点に上る貴重な社史・団体史を譲り受け、その量と質において「日本一の社史コレクション」とマスコミ等から評価を受けました。さらに収集に努め、2016年現在約18,800点に達し、「長尾文庫」という名称で、広く知られるに至りました。おかげさまで本学の経営史、企業史、産業史等の教育研究にとどまらず、遠方から来館される研究者の方々からもたいへん喜んでいただいております。
ご存知のとおり、社史・団体史は通常の書籍の流通過程に乗ることはほとんど無く、また発行されたという情報すら得がたく、収集は困難を極めております。今後も多くの方々にとって有益なコレクションとなるべく、発展していくには収集活動は欠かせませんが、当図書館だけで担えるものではなく、多くの方々のご協力を得て初めて可能になると考えております。つきましては甚だ勝手ではございますが、社史・団体史を発行予定の方、当図書館未所蔵の資料をお持ちの方、またご寄贈に関する情報をお持ちの方は、当図書館へご寄贈・ご連絡くださいますようお願い申し上げます。
ご寄贈いただいた資料は将来に渡り、大切に保存し活用させていただきます。今後も「長尾文庫」の一層の充実をはかる所存でございますので、皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。
ご存知のとおり、社史・団体史は通常の書籍の流通過程に乗ることはほとんど無く、また発行されたという情報すら得がたく、収集は困難を極めております。今後も多くの方々にとって有益なコレクションとなるべく、発展していくには収集活動は欠かせませんが、当図書館だけで担えるものではなく、多くの方々のご協力を得て初めて可能になると考えております。つきましては甚だ勝手ではございますが、社史・団体史を発行予定の方、当図書館未所蔵の資料をお持ちの方、またご寄贈に関する情報をお持ちの方は、当図書館へご寄贈・ご連絡くださいますようお願い申し上げます。
ご寄贈いただいた資料は将来に渡り、大切に保存し活用させていただきます。今後も「長尾文庫」の一層の充実をはかる所存でございますので、皆さまのご支援をよろしくお願いいたします。
【社史・団体史ご寄贈に関する連絡窓口】
龍谷大学 図書館事務部 深草図書館
〒612-8577 京都市伏見区深草塚本町67
電話:075(645)7885 FAX:075(645)8691
E-mail:f-lib@ad.ryukoku.ac.jp
龍谷大学 図書館事務部 深草図書館
〒612-8577 京都市伏見区深草塚本町67
電話:075(645)7885 FAX:075(645)8691
E-mail:f-lib@ad.ryukoku.ac.jp
分類・形式区分について
分類・形式区分について
分類 | 「日本標準産業分類」1976年5月改訂版(行政管理庁)にもとづき、原則として小分類までを採用した。必要に応じて、中分類・細分類の採用、独自項目の追加を行った。 | |
形式区分 | A | 会社が編集・刊行する社史、事業史、産業史 |
B | 団体が編集・刊行する団体史、業界史、事業史、産業史 会社以外の事業体は便宜的に団体として扱う:官公庁、特殊法人(但し特殊会社はAとする)、教育機関、病院など。 |
|
C | 会社・団体が編集・刊行した事業・沿革に係わる資料 例:定款、会社しおり、会社案内、営業報告書、事業報告、事業誌、記念写真帖、製品紹介・解説、調査研究史・資料など。 |
|
D | 会社・団体以外の第三者(研究者、郷土史家、出版社、業界新聞社等)が編集・刊行する会社研究、会社案内、業界史、事業史、産業史、地域産業史、調査研究史・資料など。(但し、一般ジャーナリズム等が出版する企業の暴露記事や商法紹介等はZとする。) | |
E | 労働組合史 | |
F | 伝記・人物史 | |
R | 参考図書(辞書、書誌、人名録、年表、統計、ハンドブックなど。) | |
Z | その他一般図書 | |
(注) A、B、Cは原則として会社・団体が編集・刊行したものとする。会社・団体が第三者(個人、出版社、業界新聞社、研究所等)に編集・刊行を委託したものも含める。複数の会社・団体が合同で刊行委員会等を組んで刊行した事業史等もここのいずれかに収める。 |
『長尾文庫目録 増補版』(1990.3)より