貴重資料の授業利用について

 図書館では、利用者の学習・研究を目的とした貴重資料等の利用について対応していますが、個人で利用される以外に、授業での利用などにも応対しています。ここでは、貴重資料の授業利用について幾つかご紹介します。

 

その1:文献等の原資料の利用

 授業利用で一番多く利用されるのが、文献等の原資料を利用されるケースです。ここでは、文学部市川良文先生の東洋近代史特殊研究Bでの利用を一例として紹介します。この科目では、東洋史学研究の海外調査の実際について、講義がなされています。

 授業では、海外調査の一例として、仏教伝播のルートを調査した大谷探検隊を取り上げられ、どのように調査されたか説明され、大谷探検隊を派遣した本願寺第22代宗主大谷光瑞師が探検隊隊員に宛てた書簡、隊員であった渡邊哲信が使用していた探検の記録日記、探検隊により将来された「李柏尺牘稿」などの実物が紹介されました。

「李柏尺牘稿」(国指定重要文化財)

渡邊哲信隊員「西域旅行記」

大谷光瑞師書簡(吉川小一郎隊員宛)

授業でのPowerPointを用いた各資料の説明

授業での先生による各資料解説

 

その2:科学分析対象資料として授業で利用

 貴重資料等の授業利用は、文献の原資料の利用といった目的だけではなく、科学分析の対象資料として、先端理工学部の授業でも利用されています。丸山敦先生の環境ソリューション工学演習では、生態学に立脚した自然への理解と環境工学的な課題解決アプローチを学修していますが、その一環として、江戸時代の和装本約360点の表紙に漉き込まれた毛髪について、非破壊で取り出し、同位体分析機やPIXE分析機を用いて分析することで、当時の食生活を解析する研究が行われました。

和装本表紙裏(毛髪が漉き込まれている)

同位体分析機

PIXE分析機

PIXE分析機

 

この研究から、江戸時代の都市(江戸、大坂、京都、尾張、近江など)では、時代を通して、主食で粟や稗を食べる割合が減少していったことや、主菜で海産物への依存が増えて行ったこと、鉄・亜鉛・銅などの微量必須元素を現代人よりも多く摂っていたことなどが分かっています。

 

その3:実習授業での利用

 文学部の博物館実習では、実習の一環として、毎年実習展示12月展を開催しています。12月展は、実習生自身が展示テーマを決めて、学内・学外から展示資料を借用して、博物館で開催される展示と同じような形で展示を開催する実習です。今年度は、11月29日(水)~12月2日(土)の間、「天つ星~天体と人のつながり~」のタイトルで、龍谷ミュージアムで開催されました。日常に存在する天体と人々とのつながり、そして人々の目に天体がどのように映っていたかを明らかにすることをテーマとして、図書館が所蔵する蘭学者司馬江漢が作成した星座図である「天球図」をはじめとする貴重資料等52点が展示されました。

「天球図」

奈良絵本『竹取物語』

『地球全図略説』

 

また、12月展で展示された図書館の資料について、担当教員より、展示借用の準備調査、資料の借用、返却などに於いて、資料取扱いのきめ細かい指導が行われました。

資料返却時の点検作業での指導風景

 

 以上、貴重資料等の授業利用について、簡単ですが幾つか紹介させていただきました。「一度授業で使ってみたい。」「こんなやり方で授業に利用できないだろうか」とお考えの先生方、学生の方がおられましたら、お気軽に閲覧カウンターにお声がけください。図書館宛てのメール(o-lib@ad.ryukokuac.jp)でも構いません。お待ちしております!

 

来・ぶらり69号(2024.3)