新規収集貴重資料の紹介

 大宮図書館には、国宝『類聚古集』をはじめ、貴重資料が数多く蔵されています。貴重資料は、学術研究などに活用されていますが、資料をより充実したものにするために、収集を続けています。
 今回新たに「オーレル・スタインからフィリッポ・デ・フィリッピへの手紙 全73 通 1913-1938 年」を購入・収蔵しました。
 本資料は、20 世紀初頭に中央アジアの探検を行い、多くの仏教文物を持ち帰ったことで知られるオーレル・スタイン(Marc Aurel Stein, 1862-1943)による73 通の書簡です。スタイン自筆で、末尾に署名もなされているものもあります。
 書簡の宛先となったのは、イタリアの登山家フィリッポ・デ・フィリッピ(Filippo De Filippi, 1869-1938)です。デ・フィリッピは、アラスカ、トルキスタン、カラコルムへ探検し、バルチスタン、ラダック、中国領トルキスタンにおいて地理調査を敢行した人物です。彼は、仏教伝播ルートとも関係の深い地域を調査していることから、この書簡の日付に先立って実際に現地を探検したスタインの知見や実経験が、非常に有益であったことがうかがわれます。
 現在大宮図書館には、スタインと同じく中央アジアを探検した大谷探検隊が収集した資料や大谷探検隊に関する資料が9,000 点以上収蔵されています。スタインをはじめヘディン、ペリオといった、同時代の欧州の探検家の事績は、周辺の動向を知る上で重要な意味を持っています。例えば、73 通の書簡の内、第1 書簡(Srinagar 発)は、1913 年2 月2 日付となっていますが、この日付は、直接の言及はないものの、大谷隊の第三次探検(1910-1914)の時期と重なっています。従って、これらの書簡は、本学で行われている大谷探検隊関連の学術研究の周辺を埋める可能性のある資料として期待されています。

(左から「書簡73通を収めるケース」「第1書簡(1913年2月2日付)」)