高野秀行[著] 集英社インターナショナル 2022年
瀬田図書館:瀬田.本館B1開架 804/タヒコ
資料番号:32400012092
著者は、探検記を数多く刊行してきたノンフィクション作家。幻獣ムベンベを探しにコンゴに行きリンガラ語を学び、麻薬王のアジトに潜入してシャン語を覚え、という展開に頁をめくる手がとまらない。25以上の言語を習得してきた著者にとって外国語(とくに、少数民族の言語)とは、探検という目的を叶える「魔法の剣」であるという。
探検記であると同時に、外国語学習について大切なことを気づかせてくれる本。とくに、著者の経験に裏打ちされる「エピローグ」での著者の指摘は秀逸。
文学部教授 水尾文子
千早茜[著] 新潮社 2022年
瀬田図書館:瀬田.本館B1開架 913.6/チアシ
資料番号:32305003135
ガツーンとボディブローを食らってノックダウンさせてくれる小説である。私の日常を吹き飛ばし、目を覚まさせてくれる。「起きろ!」「ちゃんと生きろ!」と。主人公は、戦国末期に石見銀山で働きだすウメ。銀山の過酷な暮らしが描かれているにもかかわらず、ウメの生と性は、私たちの日常生活を吹き飛ばしてくれるほど力強い。ウメは、生と性がどれだけシンプルで、かつ圧倒される営みであるかを教えてくれる。
森、土、水など自然の匂いが本から匂い立つような描写に引き込まれる。「どう生きるのか」考えたい方にお勧めの1冊である。
心理学部教授 赤津 玲子
『僕たちはまだ、インフレのことを何も知らない :デフレしか経験していない人のための物価上昇2000年史』
スティーヴン・D・キング[著] 千葉敏生[訳] ダイヤモンド社 2024年
瀬田図書館:瀬田.本館1F開架 337.9/キスホ
資料番号:32405013551
昨今、物価の上昇、すなわちインフレが経済社会問題となりニュース等で頻繁にとりあげられています。歴史的にみても国際的にみても、インフレは珍しい現象ではありません。しかし、日本で生活してきた今20歳前後の学生の皆さんは、インフレが自分たちの身の回りで起こり得る現象だと思っていなかったかもしれません。
本書は、インフレはなぜ起こるのか、世の中にどんな影響をもたらすのか、歴史的な観点から解説してくれています。本書を通じて一度、私たちの身の回りで起こっていることを客観的に考えてみましょう。
経済学部准教授 川元 康一
丸山里美・太郎丸博[編] 岩波書店 2024年
瀬田図書館:瀬田.本館1F開架 361.08/キアイ/6
資料番号:32405034875
社会学の次の30年を見据えて刊行が進むシリーズの1冊である。日本型雇用システムが変容し、貧困が可視化したここ20年間の労働と貧困に関わる諸現象──非正規雇用、長時間労働、ブラック企業などに量的・質的などさまざまなアプローチから迫ろうとする諸論考が収録されている。たとえば、「バイク便ライダーのエスノグラフィー──危険労働にはまる若者たち」「日本の労働時間はなぜ減らないのか?──長時間労働の社会学的考察」など、実状を知るだけでなく、社会学的アプローチの豊かさ、おもしろさを堪能できる1冊である。
経営学部准教授 妻木 進吾
山本圭[著] 光文社新書 2024年
深草図書館:深草.文庫・新書 081/コウフ/1297
資料番号:12300048395
聖人君子は別として、人は誰しも、他人のことを妬ましく思った経験があるのではないだろうか。
本書は、このダークで厄介な嫉妬という感情を丁寧に紐解きつつ、それが民主主義といかに分かちがたく結びついているのかを論じた好著である。嫉妬は人間の条件にほかならない。そうであるならば、嫉妬感情を煽られ、その結果社会の分断に加担することになるのを避けるためにも、いまいちど、自分の嫉妬感情と正面から向き合ってみてはどうだろうか。
法学部教授 橋本 祐子
宮本匠[著] 世界思想社 2024年
瀬田図書館:瀬田.本館1F開架 361.7/ミタミ
資料番号:32405034033
現代の日本社会は、人口減少や少子高齢化などに見舞われた、いわゆる右肩下がりの時代となり、明るい未来や希望が描きづらい閉塞的な世の中になっているのではないでしょうか。
本書は大災害によって未来の希望が描くことがより難しい被災地を事例に、右肩下がりの時代を前向きに生きていくための心持ちについて、「みんな」というキーワードから教えてくれます。
政策学部准教授 石原 凌河
彬子女王[著] PHP文庫 2024年
深草図書館:深草.和顔館開架B2 377.6/アキア
資料番号:12400019916
みなさんの留学経験はどのようなものですか?大学の厳かな儀式や刺激的な講義,国際色豊かな友人たちとの交流,そして文化の違いに戸惑いながらも自らの成長を実感する瞬間がありますよね。留学生活の裏側に潜む孤独や葛藤にも焦点を当て,成功だけでなく挑戦や失敗の重要性をこの本から学ぶことができます。
国際学部准教授 長尾 明子
幸田正典[著] 筑摩書房 2021年
深草図書館:深草.文庫・新書 081/チクマ/1607
資料番号:12100022867
人間は、他の動物と全く違う高尚な生き物だと思っていませんか。では、何が違うのでしょう。本書は、脊椎動物で一番の「アホ」だと思われ、互いの顔で個体識別していることすら信じてもらいにくい魚類が、なんと「自己意識」をもつことを示唆する研究成果を楽しく紹介する。戦略的に実験を重ねる様子や「権威」とのやり取りも含めて、ワクワクしながら読んでほしい。常識(18歳までに身につけた偏見のコレクション)を捨てる勇気を持って。
先端理工学部教授 丸山 敦
医療・福祉問題研究会 [ほか] 編著 旬報社 2018年
瀬田図書館:瀬田.本館2F開架 498.04/イリイ
資料番号:31905004914
私たちの生活に欠かせないものが保健・医療・福祉です。本書は、石川県の保健・医療・福祉の専門職、研究者、運動団体職員で構成される医療・福祉問題研究会が人権の視点、「地域」での住民、高齢者、障害のある人、有病者の立場から、保健・医療・福祉の問題点を学際的・実証的に明らかにし、今後のあるべき方向を提言したものです。過疎化・高齢化が進む珠洲市での医療・福祉サービスの欠如による「もう1つの過疎化」問題も提起しています。一極集中が進む中、地方からの発信である本書は示唆に富みます。
社会学部教授 田中 明彦
エティエンヌ・ダヴォドー[著] 大西愛子[訳] サウザンブックス社 2022年
瀬田図書館:瀬田.本館2F開架 588.55/タエワ
資料番号:32405045151
自然派ワインの醸造家と社会派の漫画家が、お互いの「作品」が作られていく現場を行き来する1年ほどが描かれているバンド・デシネ(フランス語圏の漫画)である。特に興味深いのは、「ビオディナミ」という、牛角に牛糞を詰めた等の「調合剤」を特定の日時に畑に撒くといった特異な農法の実際が、絵と醸造家の本音によってあかされているところである。このように本書は、普段は目にすることのない、「作品」が生み出される場所と人間関係を知ることができる、良質なフィールドワークの記録としても読めるものである。
農学部准教授 渡邊 洋之
朝日新聞取材班[著] 朝日新書 2024年
深草図書館:深草.文庫・新書 081/アサヒ/967
資料番号:12400022716
我が国は人口減少社会に突入していますが、2040年の日本の労働者人口は現在の8割になると予測されています。働き方や仕事の進め方、公共インフラや行政サービスの維持管理を現状のまま展開することは極めて困難であると予測されています。本書では朝日新聞取材班が取材を通して具体的な見通しや解決策について詳細に伝えています。今後の皆さんの暮らしやキャリア形成の参考になる本です。是非一読下さい。
短期大学部教授 松田 美智子