統計で見るコロナ禍の影響

 2020年1月、新型コロナウイルスの感染者が国内で確認され、世情は騒然となりました。報道番組はコロナで埋め尽くされ、人が集まるイベントは相次いで中止、マスクは店頭から消え、ネットオークションで異常な高値で取引されました。日本政府は2020年4月7日に大阪、兵庫など7都府県に緊急事態宣言を行い、4月16日に対象を全国に拡大しました。
   本学においても、入学式は中止、授業は休講、キャンパスから学生の姿が消え、図書館も4月9日から休館することになりました。学生の皆さんは先の見通せない状況、かつて経験のない事態に、不安でいっぱいの日々を過ごしていたことと思います。その後、図書館は手作りパーテーションを設置するなど出来得る限りの対策を施したうえで、6月1日から再開しましたが、開館しているとは思えないほど閑散とした日々が続きました。各種の統計資料からコロナ禍が図書館へ及ぼした影響を振り返ってみます。

1.入館者数の変遷

 深草図書館の開館についてコロナ禍前後の2019年度と2020年度を比較すると、開館日数で約20%減、開館時間数では約34%減、それぞれ大幅に減少しました。大宮・瀬田図書館でも同様に減少しましたが、それ以上に入館者数の落ち込みは顕著。2020年度入館者数の大半は後期の入館者であり、前期は開店休業状態が続きました。
   実験や実習を伴う授業をはじめ対面授業が増えるに従い、図書館の入館者数も徐々に復活してきました。2022年度、授業は従来通りほぼ対面に戻りましたが、入館者数はまだ回復途上です。電子書籍やオンラインデータベースの利用などの非来館型サービスに利用者が移行した影響も大きいと予想されます。図書館ではミュージアムとの連携展示やミニ展観を増やして図書館をアピールしていますが、一旦足が遠のくと中々元には戻りそうもありません。2023年度からはナレッジコモンズを復活させ、卒業生やREC会員など学外者の図書館利用も可能になりましたので、入館者数の増加を期待したいところです。

2.館外貸出冊数の変遷

 入館者数と同じ傾向にあります。入館者数ほど落ち込んでいないことから推測すると、来館した際にまとめて借りる利用者が増えたのでしょう。しかしこちらも回復途上であることに変わりありません。コロナ禍の間に増強した非来館型サービスが一定定着したのか。あるいはヘビーユーザーは図書館に戻ってきたが、あまり利用していない人は、コロナ禍を契機に図書館から離れてしまったのか。原因はもっと詳細なデータ分析、あるいはアンケート調査で明らかになるでしょう。
 図書館では就職活動関連の資料を充実したり、以前から人気のあった本屋大賞受賞作等の小説を積極的に購入したりしてきました。さらに拡充させたいところですが、しかし2022年度以降、急激な円安により洋雑誌やデータベースに予算を割かれ、学部生向けの図書予算が十分に確保できないことは悔しく思います。
 なお参考までに、学部ごとの貸出冊数の変遷を末尾に掲載しました。

3.電子書籍の閲覧回数の変遷

 電子書籍の提供元は多岐にわたりますが、ここではMEL(Maruzen eBook Library)の閲覧回数の変遷を掲載します。MELは2014年に導入し、徐々に買い足して、2019年度末時点で約8,500タイトルが、2022年度末時点で約16,000タイトルが閲覧でき、その大半は学部レベルの和書であり、利用の中核を占める電子書籍です。コロナ禍前までの閲覧状況は低調でしたが、コロナ禍の途端に一気に急増しました。レポート課題などで必要に迫られた学生の皆さんが電子書籍に着目したのでしょう。2020年度以降、KinoDenやLibrariE等の電子書籍も購入し始めましたので、2021年度以降にMELの閲覧回数が減少しているのは、他の電子書籍へ利用が分散したためだと思われます。

 

参考


※ 2020年度に改組した先端理工学部を含む

来・ぶらり68号(2023.9)