龍谷大学図書館ウェブマガジン
2024(令和6)年9月発行
コロナ禍を経て
龍谷大学図書館長 竹内 真彦
未知の感染症がここまで社会を変容させるものだということを、私たちのほとんどは、3年半前までは想像することすらできませんでした。コロナ禍に晒されたこの3年半は、文字通り「想像を絶する世界」だったわけです。
この『来ぶらり』68号では、コロナ禍における図書館の対応についてまとめています。この3年半が如何(いか)に想像を絶するものであるかを検証している、とも言えます。
例えば「統計でみるコロナ禍の影響」には、図書館の館外貸出冊数の変遷が示されています。当然のことながら、コロナ禍がはっきりと姿を現した2020年度は大きく落ち込み、その後2年間でも「元」には戻っていません。しかし、コロナ禍を境として電子書籍の利用は大きく増加しています。これは、従来の紙の書籍の利用が電子書籍に置き換わったことを意味しているように思われます。
このような検証は、私たちに新たなことを気づかせます。「元の世界に戻ることはおそらくない」と。
しかし、改めて考えてみれば、コロナ禍のような災厄がなくとも、人間/社会/世界は変容し続けるしかありません。それを如何に「よい」ものとするか? と問いかけ続けることこそが必要です。それこそが、このコロナ禍の経験を私たちが活かす方法なのでしょう。
著作権法31条の改正
著作物の公正な利用を確保するため、著作権法は、例外的に、著作権者の許諾なく著作物を利用できる場合を定めており、これは一般に「権利制限規定」と呼ばれています。さまざまな権利制限規定のうち、著作権法31条(図書館関係の権利制限規定)の改正が、2021年6月2日に公布されました。
この改正は,インターネットを通じて利用者が図書館資料を利用することを一定の範囲で可能とするものであり,その背景には,新型コロナウイルス感染症の流行による図書館の休館等の影響がありました。
具体的には、2022年5月1日より、国立国会図書館による絶版等資料のインターネット送信が認められるようになり、利用者はリモートで絶版等資料(絶版の資料や入手困難な資料)を取得できるようになりました。
さらに、2023年6月1日からは、特定図書館等による図書館資料のメール送信等が認められるようになりました。調査研究を行う方にはさらに利便性が向上します。
現在、送信サービスを行うことができる特定図書館として権利者への補償金支払方法や不正拡散を防止・抑制するための措置等を検討中です。