新規収集貴重資料の紹介

 大宮図書館には、国宝『類聚古集(るいじゅうこしゅう)』、国指定重要文化財『念仏式(ねんぶつしき)』、『李柏尺牘稿(りはくせきとくこう)』をはじめ、貴重資料が数多く所蔵されています。貴重資料は、学術研究や授業などに活用されている他、毎年秋に開催される大宮図書館特別展観で、その年のテーマに関係したものを選んで、展示公開しています。また、貴重資料のカテゴリーをより充実したものにするために収集を続けています。

 今回新たに丹緑本(たんりょくぼん)『保元・平治物語(ほげん・へいじものがたり)』を購入・収蔵しました。丹緑本とは、江戸時代の寛永から万治頃(1624~1661)にかけて刊行された、墨刷の挿絵に丹(たん)(朱)・緑青(ろくしょう)・黄の彩色を施した版本です。後の多色刷り版本へとつながる資料として、出版史上その価値が評価されています。内容は、平安時代末期に起こった保元の乱、平治の乱を題材にした軍記物語です。同じ軍記物語である『平家物語(へいけものがたり)』や『承久記(じょうきゅうき)』と合わせて『四部合戦状(しぶかっせんじょう)』とも呼ばれています。

 保元元年(1156)、崇徳上皇(すとくじょうこう)と後白河天皇(ごしらかわてんのう)の皇位継承問題に摂関家の藤原頼長(ふじわらのよりなが)と藤原忠通(ふじわらのただみち)の対立が加わり、両者が平氏や源氏の武士団を用いて交戦したことから、保元の乱が起こります。後白河天皇や藤原忠通、平清盛(たいらのきよもり)、源義朝(みなもとのよしとも)らが勝利しますが、やがて後白河上皇の近臣である信西(しんぜい)と藤原信頼(ふじわらののぶより)の対立をきっかけに、平治元年(1159)に平治の乱が起こります。この乱により信西に味方した平清盛は、信頼方の源義朝に勝利し、平氏は隆盛を極めていき、源氏は衰えていきます。そして、約20年後の源頼朝(みなもとのよりとも)による平氏打倒の挙兵、平氏の滅亡へと繋がっていきます。

 栄華を極めた平氏が、頼朝の挙兵により衰亡していく過程を物語った『平家物語』と同じように、『保元・平治物語』でも、保元の乱で勝利した側が対立を迎え、平治の乱により再び勝者と敗者に分かれる過程を物語っています。また、『平家物語』と同じように琵琶法師によって語られていたことが知られています。

 龍谷大学図書館は、軍記物語では、覚一本(かくいちぼん)『平家物語』の最善本を所蔵しており、岩波書店の『日本古典文学大系』の底本にもなっています。その他にも丹緑本『義経記』(源義経の生涯とその主従を中心に描いた軍記物語)なども所蔵しており、丹緑本『保元・平治物語』が収蔵されたことで、軍記物語分野の資料がより充実することが期待されています。

 

『保元物語』部分(右頁挿絵は、源義朝に攻められ、崇徳院の御所白河殿(しらかわどの)が落ちる場面)

 

『平治物語』部分(右頁挿絵は、待賢門(たいけんもん)に陣取った源義朝と平重盛(たいらしげもり)との戦いの場面)